腎不全(?)の話の続き

ハナノカイヌシ

2018年04月15日 16:13

先日のお話、要するに言いたいことは、
「尿素窒素(BUN)が上がっているからと言って、
問題が慢性腎不全(だけ)とは限らないんですよ」ということ。

(注)BUN(血中尿素窒素)とはたんぱく質の分解産物で、本来は尿として排出されるもの。
腎機能が衰えるとBUNは高くなります。
血液検査ではこれとCRE(クレアチニン)を合わせて腎機能の評価をします。

それなのに、転院症例を見ると、体調不良でBUNが上がっていると、
「はい、慢性腎不全。飲み薬と処方食と点滴ですね~。
改善しない?腎不全だから仕方ないね~。
吐いちゃう?腎不全だから仕方ないね~。
痙攣出た?腎不全だから仕方ないね~。」
みたいな診療を受けている患者さんが結構いる様子。

確かに慢性腎不全は治すことはできず、徐々に進行していく病気です。
ですが、併発疾患に対するケアをして、
進行具合に合わせたサポートをしてあげることで、
その進行を遅らせたり、不快症状を軽減したりすることはできます。

慢性腎不全があるとき、高血圧を併発していることは比較的多くあります。
高血圧があると、血管の塊である腎臓はダメージを受けやすく、
腎不全の進行が速くなります。

「最近やたらと鳴いてうるさい」などというとき、
血圧を測ってみると高血圧が見つかることが結構あります。
高血圧による頭痛がつらくて鳴いているのではないかと言われます。

猫さんの血圧測定は難しく、逃げようとして動き回ってしまう子、
尻尾ではかろうとしたら尻尾をブンブン振っちゃう子、などなど
測りたくても測れない子もいます。
でも、とりあえずチャレンジはするようにしています。

慢性腎不全に続発して高血圧が起こっている場合、
腎不全の治療で血圧も落ち着くこともあるので、
腎不全の治療を行ってみて、まだ高血圧が続くときには降圧剤を使います。

また、慢性腎不全は高齢で発症することが多いので、
高齢猫さんに多い病気を併発することもあります。

多いのは甲状腺機能亢進症。
妙に活発になる、やたらと鳴く、ご飯を食べているのに痩せてくるなどの症状が出ます。
甲状腺機能亢進症でも高血圧を起こすことがあります。
甲状腺機能亢進症による高血圧は甲状腺機能亢進症を治療しないと
降圧剤だけでは反応が悪いことがあるので、
高血圧があって、降圧剤を使っているのに反応が悪いときには
甲状腺の検査をしたほうがいいかもしれません。
甲状腺の治療には、療法食での治療とお薬による治療がありますが、
甲状腺を治療するとかえって腎数値が悪化することがあります。
また甲状腺機能亢進症のお薬では、
食欲不振などの消化器系の副作用が出ることが比較的多く、
腎不全が進行している段階では実際には治療が難しいこともあります。

また、心不全(猫で多いのは肥大型心筋症)を併発しいると、
点滴をすると胸に水がたまったりしてかえって苦しくなることがあります。
この場合、治療はかなり困難になりますが、
心不全を治療しながら心臓の負担にならないように腎不全の治療をしていくしかありません。
また、高血圧で心臓に負担がかかり、心不全症状が出ていることもあり、
この場合は高血圧を治療することで心機能が改善し、
うまく維持できるようになることもあります。やっぱり血圧チェック大事ですね。

また、腫瘍性疾患からくる腎機能低下ということもあります。
腫瘍性疾患となると治療が難しい場合も多いですが、
早めに見つけることができれば治療につながることもあります。






あづみの動物病院
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